Googleニュースのおすすめトップに来ていた、山上徹也容疑者が2年前に読んでいた私の記事、交通事故記事に何を感じたのか を読んで、少し思ったことを書いてみたい。
この記事(以後、記事)で著者(柳原 三佳)は
理不尽な出来事をきっかけに、家庭が崩壊してしまう、という切ない現実
山上徹也容疑者が2年前に読んでいた私の記事、交通事故記事に何を感じたのか
凍結されたツイッターアカウントでツイートされていた2本のレポート
が共通している点において、山上は
巨大な力に対して声を上げることができないまま悲しい結果を招かざるをえなかった当事者たちの運命に自分の境遇を重ね合わせ、ふと心を寄せたのでは……。
山上徹也容疑者が2年前に読んでいた私の記事、交通事故記事に何を感じたのか
凍結されたツイッターアカウントでツイートされていた2本のレポート
と推測している。
著者の推測に賛成である。
ただ、山上はそれにもまして強い正義感を持っていたと私は考えている。
理不尽に対して山上は抗おうとしていたと思えてならない。
抗う上で採られた手段が安倍元首相暗殺である。
目的は統一教会への復讐であると私は憶測している。
彼の家庭の事情は省略するが、ここで山上と私の共通項を書いてみたい。
山上は80年生まれ、99年に高校卒業して、社会に出た。
私は78年生まれ、05年に大学卒業して、社会に出た。
年齢は近いが社会に出た時期は若干異なるように見えるかもしれない。
しかしながら、就職氷河期に含まれる時期に双方とも社会に出た。
就職氷河期という理不尽に対して抗った人々の一人が山上である。
秋葉原通り魔事件を起こした元派遣社員(82年生まれ)もその一人。
京都アニメーション放火事件の男性(78年生まれ)もその一人。
そう考えると私もその一人になっていた可能性を否定できない。
その中でも山上は「正直者がバカを見る」世界、社会に対して我慢できなかったのではなかろうか。
もちろん、そのような正義感から殺人が肯定されるべきではない。
しかしながら、このような不条理な社会に対して、私たちと同じかそれ以上に極めて正義感が強かった結果、あの行動に移したと推測できる。
努力しても報われなかった我々の世代(2022年時点で40代)は、今後とも他の世代からは悪辣と思われ、同情の一献もない行動を近い将来に再度起こすと私は予想する。
この不条理な社会のシステム自体を変革するときではなかろうか。
少なくとも就職氷河期戦線で瀕死の世代である窮鼠への対策を怠れば大猫を噛み続けるだろう。
ここでホンダが2012年に放送した象徴的なCMを紹介したい。
がんばっていれば、いつか報われる。
持ち続ければ、夢はかなう。
そんなのは幻想だ。たいてい、努力は報われない。
たいてい、正義は勝てやしない。
たいてい、夢はかなわない。そんなこと、現実の世の中ではよくあることだ。
けれど、それがどうした?
スタートはそこからだ。
本田技術工業
2012年の当時34歳の私を振り返りながら、当時32歳の山上を憶測することを許してほしい。
双方とも一般的にはこれから社会で存分に活躍していくことを待望されるときだ。
私は当時、地元姫路のIT会社に試用期間つきの社員として、かろうじて就職できた頃だった。一方、山上は宅建やFPの資格を既に取得していたか、取得しようとしていた頃と推測できる。
この時点で既に、上述の「社会で存分に活躍していくことを待望」されうる条件の、ようやくスタート地点に立ったか、立とうとしていたのは山上も私も同じである。
長い長い氷河期を超えて努力も正義も夢もクソ喰らえな現実を思い知った後である。
それから10年後、私はこれまでに仕事を何回か変えたが現在、正社員として社会に貢献しているという自負を持って働いている。
一方、山上は暗殺という手段で社会を変えようと試みた。
アンダークラスで聡明な彼が挑もうとしたのは、そのアンダークラスからの脱却でもなく、家庭を壊した宗教でもなく、どうしようもない過去の彼自身を壊して、その劣悪な自分を越えようとしたのではなかろうか。
ホンダのCMは以下のように続いて締めくくられる。
新しいことをやれば、必ずしくじる。
腹が立つ。
だから、寝る時間、食う時間を惜しんで、何度でもやる。
さあ、昨日までの自分を越えろ。
本田技術工業
私は、そして、山上は昨日までの自分を超えたのだろうか。
答えは誰も教えてくれない。
自分で出すしかないのだ。